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2cm の板

小学4年生の夏の日に、けっこう大切なことを悟ったという話しです。    

その日僕は、夏休みの宿題の工作を作ろうとしていて、何かの本に書いてあった「 木の椅子を造ろう 」という設計図を広げていました。「 準備するもの 」の一項目めに、「 厚さ 2㎝の板 」と書いてありまして。この、短い、たった1行、「 厚さ2㎝の板 」の為に、純朴な大橋少年が涙の苦難を強いられ、ついにはなぜか悟りを開くに至ったというありがたいお話しです。

「、、、2センチの板かぁ、、」大工道具は父親が揃えてあったし、木材を積んだ一角もあったので、とにかく、設計図の指令にある通り、「 2センチ、、2センチの厚み、、」を探して、定規をあてて、あたり一面に板を広げて行きましたが、「、、あぁ惜しい!これは1.8センチ!、、これはっ!、2.3、、、」、、無い、無い、、、2㎝ジャストの板はそうそう無いわけです。すでにあせっております。のっけから全然進んでませんので。海へ走って行って流木まで計っています。 夏休みは刻々とカウントダウンを始め、ただひたすらに2㎝を追い求め、半泣きになってるわけです。  昼飯も喉に通りません。奥歯で箸を噛みながら、天井の方を見上げていましたら!「、、んっ!そうだっ!くっつけよう! 1センチの板!あれをくっつけよう!!」さすがです、ひらめきました。自分の天才ぶりに鼻をふくらませ、今度は、2㎝の板づくりを始めました。がしかし、木工ボンドがなかなか2枚の板をピッタリとくっつけてくれません。ゆがんでいます。板も、顔も。北海道のきれいな夕焼けが目にしみます。もう陽が沈む頃、ついに父親が登場しまして、「 お前は何をつくってんだ?」「 いすデス 」「 それはどこに使う板なんだ?」「 それはまだだちょっと、、」「 2㎝じゃなきゃだめなのか?」  、、、、、というあたりで、少年の頭はついにパッカーンと開いて、人生の悟りを開いたという話しなのです。

探していた板は、座面に使う板で、2㎝と書いてあったのは座る強度に必要な目安だったわけで、丈夫であれば1.8でも2.3でもよかったわけで。

「 2㎝の板 」事件から丁度40周年目となりますこの夏、その後のわたくしが折に触れて思い出しますあの日の「 悟り 」をまとめておきます。

1) いま僕は( このグループは )何をつくろうとしているんだっけ?

2) で、そのために今やってる事、あってる?

3) 他に方法ない?

4) つくろうとしているもの、もっとイメージして!

どこで、何するときも、です。 個人も、恋人も、家族も、会社も、国も。

「 何に向かっているのか 」がわかっていれば、「 何をすればいいのか 」はそうそう間違えるものではなくなるはずです。

あの日、結局イスは完成せず、ゆがんだ2㎝の板だけが残って、父親は「 それを持って行って出せばいい 」と言ってくれましたが、恥ずかしくて海にぶん投げたのを思い出します。  よく、思い出します。

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